小学生の頃、親から今で言うネグレクトをされていた。
学校が夏休みに入って頼みの給食もなくなり、家に何日も親がいない状態。
食べるものも無く、4日間水以外何も口にしていないという頃
「このままではタヒぬ」
と思って意を決して家を出た。
体力も無くてフラフラの状態だったが無我夢中で、
家から少し歩いたところにある文房具屋に入った。
何故そこに入ったのかハッキリとは覚えてないけど、
とりあえず大人がいる建物に入らないとと思ってたような気がする。
文房具屋の店主の爺ちゃんは自分を見てビックリしていたけど
「食べる物ください」
と訴えたら店の裏の自宅に連れて行ってくれた。
中には婆ちゃんがいて(やっぱりビックリしてた)、
爺ちゃんが
「今すぐなんか出してやれんか」
と言うとパタパタ台所に行って雑炊を作ってきてくれた。
夢中で食べてすぐに平らげてしまって、正直味なんて全然わからなかった。
食べ足りないと思ってたところに、婆ちゃんがお菓子を出してくれた。
そのお菓子があまりに美味くて、この世にこんなにうまいもんがあるんだと
それがとにかく衝撃的だった。
サンドイッチのお菓子バージョンみたいな感じで、
パンがスポンジケーキ、中身が羊羹だった。
当時はスポンジも羊羹も勿論、甘いものすら食べた記憶がなかったから
美味しさで頭の中が軽いパニックになった。信じられなかったよ。
2つ出してくれてたんだけどこれもすぐに食べてしまったら、
追加でもう1つだしてくれた。
それを食べたところでようやく落ち着いて、風呂にも入れてもらった。
垢がボロボロ出る俺を爺ちゃんが一生懸命洗ってくれた。
あの時のあのお菓子もう一度食べたいけど、
スーパー探し回ってもなかなか見つけられない。